言葉のおもちゃ箱

心を通過した言葉を綴っています

【詩】旅

君の言葉は持ち重りがするから ここに置いていくね ごめんね、せっかくだけれど持っていけないんだ きっと長い旅になる 運命ってことばが 好きな君だから きっとまた会えるよ、とか、そういうことを 言えば笑ってくれるだろう わかってるよ だけど何も言わず…

【詩】日々の糧

誰かに荒らされる前に 自分でめちゃくちゃに荒らす めちゃくちゃに荒らしたらそこに種をまいて 雨が降るのを待っている もやもややいらいらや きらきらやうきうきを 肥料にして なにかが実るのを待っている 雨だけは神頼み それくらいは許してよ ちょっと待…

【詩】鳴らない

電話ごしでいつも笑ってた ただ声をきくだけで幸せだった 冬の車内や夜の家路や さむい台所で立ったまま何時間でも話した 話疲れても切ることができなかったよ 眠る間際まで君の声が頭に響いていた それは幸せな夢への入り口となって 結果としてわたしは片時…

【詩】わたしの頭の中

今日 手を繋いで歩いたね てのひらのあったかさと 風のつめたさが心地よかった 金木犀のにおいがしていたね 夕陽がたっぷりとわたしたちを包んで くっついた長い影が遠くまでのびて わたしこのままこの先も ずうっとあなた一緒なのかなぁって思ってたら これ…

【詩】あの頃

いつものことだけれど あの日のことをこんな風に思い出すなんて 思いもしてなかったよな いきなりあかるく いきなりあふれかえって 僕は驚いて息をのむ あらがいようのない記憶の中で 母の作った卵焼きの味 暇潰しに眺めてたマンションのエントランス 汗で濡…

【詩】朝と歯ブラシ

冷たさに慣れた 冬の朝の洗面台 もう1本の歯ブラシはなんとなく捨てられずに わたしの歯ブラシと一緒にコップの中 なにか思わないといけないのかなぁ あなたがいないことに わたしはなんにでもすぐに慣れるの 凍てつく指先がなかなかあたたまらなくても わ…

【詩】ゆで卵

どこにも行きたくない なにも話したくない ゆで卵ばかり食べて いつか白と黄色のきれいな体になりたい 体育座りで泣いていたい 泣いたまま眠っていたい 眠ったまま命を消費したい だけどそれは叶わない 誰かと幾千万の言葉を交わしても 誰かと何万回の抱擁を…

【詩】夕闇

夕闇の中で見る君はきれいだ 顔立ちが深くかげって 瞳だけがしずかにひかっている 2時間前に喧嘩したのが嘘みたいだ 今は僕ら ただ潮騒の中に佇んでいる あと何回争うと僕らは別れるのかな 別れたいから考えてるんじゃなくて ただの純粋な疑問 君からかすか…

【詩】オリオン

どんな星座見てもオリオン座だって 言うきみのこと笑ってごめん でも今は夏だし 空にはアンタレスが輝いてるよ ほら、あの赤い光 星座早見表って昔あったよね 今も売ってるのかな 夏休み 山の上のコテージで 早見表と空を見比べてた 星は好きだよ 小さい頃か…

【詩】夏の夜

字が書けてよかったなぁ 君に手紙が書ける 君が永遠に読むことのない手紙だけど ペン先が心をなぞる音をきいたことがあるかい? 夏の夜に静かに紙にむかう文字が書けてよかったなぁ 口では決して言えない 君が永遠に読むことのない手紙だけど 書くことに意味…